本丸「板門店=판문점(パンムンジョム)」は次の機会に
「北朝鮮をただ見に行く旅」、今回は国際色豊かな「現地予約のDMZツアーに行ってみた」編。
10年前に杉並のドン・キホーテの家電売り場で流れていた「KARA」のPVに衝撃を受けて以来(それもようわからんが)、韓流バラエティでの独学、民団の会話教室を経て韓国の大学へ語学留学するまでに至った妻に、「今度荷物届けるついでに、ソッチで取れるツアー予約しといて!」と適当に頼んで実現したもの。

家人が語学留学したソウルの「崇実大 =숭실대(スンシルデ)」。
ソウルらしく変な坂道の交差点にそびえている
当初は「とにかくJSA!板門店!」と言ってたんだけど、板門店にいくツアーは曜日が限られていたことから、この時の日程に合わず断念。

このツアーには「板門店 =판문점(パンムンジョム)は含まれていなかった。
曜日限定や閉めてる時もあるので事前の計画が大事
ならばとりあえず北朝鮮が見られるツアーに、とチョイスしたのがこの「DMZツアー」。まずはツアー会社の人が乗用車で、我々が泊まるような細かい旅館を回ってお客をピックアップ。明洞の某製菓メーカー経営巨大ホテル前に集めて大きい観光バスに乗り換え。
国際色豊かな現地予約のツアー

コレがツアーの大型バス。車内の空気は行き先が行き先だけに注意事項も多く、1部人民の皆様を除いてピリッとしていた
ブラジル、中国、東南アジア、ヨーロッパ諸国からの人達に混じって出発。日本人は我ら夫妻のみ、ガイドは英語のみという結構刺激的なツアー。
コースは『自由の橋』がウリの「臨津閣 =임진각(イムジンガッ)」→北朝鮮が“南侵”のために掘った「第3トンネル」→平壌行きの電車が発着する予定(あればね)のKORAIL「都羅山駅 =도라산역(トラサニョッ)」→軍事境界線と特区ケソン工業団地付近が臨める「都羅展望台 =도라전망대(トラチョンマンデ)」→土産を買わせるためだけの謎タイアップ「アメジスト博物館」→解散。

いよいよ民間人出入統制区域「統一大橋」を渡る。
ここは警備状況が敵に分かっちゃうので写真撮影当然禁止(当然隠し撮り)
バスはイムジン河に向かってひた走り、民間人出入統制区域(CCZ)を通って「統一大橋 =통일대교 (トニルテギョ)で停車。ここでパスポートチェック。もはや興奮を抑えきない。
…が、この時後方席で騒いでガイドさんに叱られていた(中坊かよ)中国人グループの皆さんの1人が「パスポート持ってない!」とか言い出して、世界中のお客さんの顰蹙を買う事態に。でも結局なんだかんだで通してもらえたらしく、車内の空気がなんとなくモヤモヤ…
頭の中は“あの歌”がルフラン

「臨津閣 =임진각(イムジンガッ」の鐘楼。“平和の鐘”は朝鮮戦争で使われた金物のリサイクル
とか言いつつ、すぐに最初の目的地「臨津閣」に着く頃には皆すっかりそんなこと忘却してウキウキモードに。
ここは巨大な駐車場や巨大な展望デッキ付きレストハウスが印象的。そして、なぜか韓国人がやっちゃう現代彫刻やオブジェが統一感無くたくさんあるのが特徴。

イムジン河にかかる“新”平和の橋。現在は鉄道。ほんとに水鳥だけが自由に行き来している
メインは「自由の橋」
元々この「自由の橋」は戦時中の鉄道橋を道路に転用し、そのままイムジン川を渡って北まで行けたという。現在はまた鉄道線路が敷かれていた。
「ホントにあった!」

「自由の橋」。居た!問題作「JSA人形」。ここは韓国側なのでソン・ガンホのは無い
朝鮮戦争の捕虜が南北に帰還する時「自由マンセー!」と叫んで渡ったことからこの名前に。

“旧”自由の橋(なのか?)。鉄道線路にぶち当たって先には行けない。当然、現在は北に繋がってもいない
白い綺麗な橋が韓国から北へ向かう下り線。その左側に、戦争で壊されてコンクリの橋脚だけ残っているのが上り線。ここには当時爆撃されたという機関車の展示があった。

朝鮮戦争時の銃弾、爆撃の後も残る錆びた機関車。カッコいいとか言っちゃいかん
水鳥だけが自由に飛び交っている

分断の歴史、統一への願いが込められたリボン。色々なモノの重みでそのうち金網が倒れると思う
掘った時の朝鮮人労働者の事ばかりが気になる「第3トンネル」別名「南侵トンネル」は写真撮影禁止。都会暮らしでナマり切った中年の足には結構な運動(インド人のクソガ…子どもさんに坂道でアオられて余計キツかった)。

「第3トンネル」案内図。もうね、「ホントに朝鮮人が掘った」という事実だけで頭がクラクラする。
中は写真撮影禁止
目の前の資料館前にはまたしても現代彫刻。モニュメントは統一感が大事だと改めて思うんだけど。

「第3トンネル」は別に統一を目指して掘ったワケじゃないだろうに、このオブジェは一体…
貴重な資料展示も瞬時に興醒めさせるダメなマネキン(なぜか韓国は絶対どこでもやる)と合わせて、お国柄か。

ここは韓国人も来ていいDMZ施設なので、子どもから高齢者まで韓国人たくさん居ます
なおDMZ関連の施設で、韓国人が来ても良いのはここだけということで、確かにここは客層が違った。
俺がこのツアー、ダークホース的に気に入ったのが「都羅山駅」。

「都羅山駅」外観。モダンだが、やっぱKORAILっぽい
「ホントにあった!」
定期列車は運行していないということですが、ダミーじゃないのがオドロキ。コンコースには息子ブッシュと金大中が来て講演したことで南北統一の機運が高まった(かどうかは知らない)という2002年のエピソードのみが大きく(虚しく)謳われている。

コンコース。ムダにだだっ広いのは韓流。謎のスピーカーオブジェも韓流
しかし、使っていないからかとても構内は綺麗で、「いつか統一の暁には…」などと来ない未来と来ない列車につい思いを馳せさせる、良い観光地。

一応平壌行きの案内が出ているのが泣かせる
「ただ北朝鮮を見る」ためだけに
山道を登って、やって来ました。本日の最終目的地「都羅展望台」。

「都羅展望台」外観。このツアーでは施設内に入らなかったけど、中は何だろう
思い切り軍事施設じゃん。

日本語でもスローガンが書かれているが、イマイチ意味不明
事前の情報では「展望もラインより後ろから、写真撮影禁止」とあり、どうやって盗み撮ってやろうか考えながら来たんだけど、お目溢しなのか方針転換か、バンバン写真も撮って良しになっていた(現在は不明)。

展望台からの眺め。季節は5月。春霞で北が良く見えない。DMZツアーはこういう所がギャンブル
どの「北朝鮮を見る」ツアーにも言えることだけど、ギャンブルなのは天気。東京くんだりからエッチラオッチラ出掛けて行っても、まるで富士山のようにクッキリ全景は拝ませてくれない日も多いのが難点。

おぼろげすぎて申し訳ないが、増感で浮かび上がった例のアレ。開城市機井洞の超巨大国旗掲揚塔(高さ160メートル!)
冬の1番寒い、耳キーン!の日を狙おうにもこの辺多分大雪降るし、曜日も決まっているし。
この日も、なんて言うのこれ「花曇り」?結果、北ヴューはイマイチの結果に。

非武装地帯のちょうどセンター辺りにある国連の施設。その向こうに、北が「平和村」と呼んでいる開城の町が見え…ない!
自然環境保護にはDMZが最適?
ここ、何かが根本的に間違っている気がする啓発ビデオで散々自慢になってるくらい“手付かずの原生林”らしいので、その辺もモヤがかる理由かもしれない。
ソウルに戻って「アメジスト博物館」、面白かったのはブラジル人。まるで興味ないとばかりに中へ入りもしないし、「俺、ほか行くからここでフケるわ」っつって勝手に帰っちゃうしで、集団行動に対する文化の違いと自立したオトナな感じが見られて楽しかった。
我々?もちろん南米人に倣ってフケたよ、ここで。アメジスト磨いてる人には申し訳ないけど。
このツアーの「北朝鮮」はやや軍事色が強く、自由に過ごせる田舎の展望台とは随分と雰囲気が違ってた。とにかくココでの感想は、「70年も手付かずだとここまで原野を残せるのか…」ってゆー自明のことでしたとさ。
◉野磁馬
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