“境界の町”深圳で彷徨う 〜そしてミンスクは何処へ〜

迷い込んだ深圳の町。アジア圏はどこも日本に似ているようで、どこも全然違う。 例えば看板、例えば色使い
アジアローカル旅

I♡HK!香港に初めて行ったのは返還より10年も前の1987年。まだ空港が、旋回しながら九龍城砦のアンテナスレスレを降りていく“香港カーブ”で有名な「啓徳空港」だった頃。

そこからなんだかんだで渡港通算5~6回くらいかな(ちゃんと数えろ)。

2003年の香港。代名詞だったこんな看板はどんどん撤去が進んでいる。残念!

韓国と同様に香港も狭いので、渡港3回目以上でもう大体見て回って食って買い尽くしてしまったという諸兄、深圳はどうですか?

今や深圳の発展といえば完全に一時の香港の勢いを上回り、世界に名だたる近代都市に変貌。内陸のくせに香港スタイルに肖ってドンドン高層化して行ったため、スッカリ他所ではあんまり見かけない“ワケのわからない景観”になっている。

2018年の渡港時には深圳と香港の境界を見下ろす山でのロケがあり、散々風変わりな景観を撮りためたのだが、ある日Macのデータが全部飛んだため、こんな写真しか残ってないのが無念

今回紹介するのはそんな眠らないハイパー・テクノシティ的な側面じゃなくて(そもそも東京でも香港でもその側面に全く関心がない俺)、なんだかもっとよくわからない辺りのハナシ。

いくつもあるイミグレの中でも最も賑わう「羅湖口岸」の深圳側

新界にある“国境”って言ったら叱られるイミグレ周辺は「爆買い問題」の時に日本でもすっかり有名になり、今や駅前の“ニセ物城”「羅湖ショッピングプラザ」もすっかり定番観光地になったものだ。

ニセモノ天国「羅湖商業城」。
香港や台湾、韓国の田舎でも多く見られる青いガラスの建物。昭和の息吹

とりあえず行ってみたけど、俺はこういった場所でガンガン土産(ニセモノ)を買うというタイプではないので冷やかし程度に(とか言って、執拗な呼び込みに負けてお茶たくさん買ったけど)。

羅湖商業城の中。やはり色使いなど日本とは全然違う

この時は、同様にあまり趣味が一般的でない家人との旅行だったので「せっかく中国に入ったんだから(いや、香港も中国だけど…)、駅を離れてどっか行ってみよう」とネットを検索。

そこで発見したのが、その名も「ミンスク・ワールド」!ソ連軍の空母「ミンスク」が払い下げられてテーマパークになってるとゆーじゃないの!なんでだ!行きたい!

多分、ここの景観ももう全然変わっていると想像される駅前ロータリーとバスターミナル。
スコールじみた雨が降ってきたが、傘をささない“東南アジアスタイル”の人も多い

まあ、買い物より全然盛り上がります。場所は東部海側の「盐田」。日本語表記だと「塩田(えんでん)」という町にあるようだ。
まずは住所を控えて、どうせなら人民の皆さんとバスに乗って行こうと駅前のロータリーへ。

バス路線図。25番に乗れば「塩田」に行くようだ

あった。25番のバスのようです。いざ、と思った瞬間、突然の大雨が降ってきた(あるある)。

そういえば、2014年公開の中国映画「最愛の子」の舞台が深圳だったな(あの電線!)。なんかいっつもジトジト雨降ったり止んだりしていた印象なんだけど、そういう場所なのだろう。香港も常にそんな感じっちゃ感じですが。

「塩田」停留所付近の歩道橋。
もうソコは、日本に似ているようで全然違うワンダーゾーンの中

バスに乗り込み雨の中を30~40分(体感)。「盐田ナントカ」という停留所がいくつかあったけど、シンプルな「盐田」で降りてみた。とりあえず海に出れば何かわかるかも、というとても初めての土地とは思えない大雑把な感じで歩いていく(真似しないで)。

いや~、この瞬間がアジア旅行の醍醐味じゃん。どこだかわからない土地で、日本とは似て非なる文化の街並みを歩くという…異邦人感と言うか。

壁面に直接切り文字で建物の名前を入れたり、行政のプロパガンダ壁画があったり…
山頂の謎施設もそうだけど、なんか我々がよく知ってる風景と“ちょっとだけ違う”ってのがシビれる

いや、そもそもの目的地が不明なのでそんなに浸ってもいられず、結局スマホ片手に交番に駆け込んじゃったけど。

これまた新鮮(深圳だけに)、全く言語が通じない。そりゃそうだけど、そうだった!と。画像なども見せながら身振り手振りで説明するも分かってもらえず…こういう時、何故かつい英語で喋っちゃうのもまた日本人のおかしい所。若いお巡りさんも苦笑い。

警察は「公安」ね。ホテルは「招待所」。コレだけで異国情緒が出る

面白かったのは、年嵩の方のお巡りさんが画像を見て「あ~!これね。もう塩田には無いんだよ。他のところに移ってさ…」と言っている事が何となく理解できちゃう事。
言語というのは不思議。ホモサピエンス、必死の時のテレパシーでしょうか。

でも問題は、その後「ミンスク」がどこに行ったのかは聞き取れないという…地図を指差してもらったけれどなんか遠くに移動したようで、無いことだけは分かったのでその場はソソクサ退散。

とは言え…

「ホントにあった!」

らしいことは分かりました。

外部リンク→ https://ja.wikipedia.org/wiki/ミンスク・ワールド

帰国後wikiで調べたら『2016年4月撤去されていることが現地にて確認された』とのこと。何だこの言い方は…そして新しい係留地は「江蘇省南通市」らしい。何故かは知らない。

せっかくバス乗ってよくわからない所に来たのだから、もう少し散策してみよう。メシとかも食ってみたいよね。

「公安」とか「招待所」とか見慣れぬ漢字看板の掲げられた共産主義的建物の中をそぞろ歩いていい感じの路地へ。ここに決めた。

大通りから一本入った裏道にあった「木桶飯」の店。
入るのに結構勇気がいるけど、外資系ファストフードよりは良かろうと

よく知らない土地ではよく知らないご飯をということで、「木桶飯」。有名?

ひと言も口を聞かないお姉さんが1人で店番。品数豊富だが全部同じ桶で、全部飯にかけてあるという労働者御用達スタイルがランチにはとても良い。メニューの中身はよくわからないけど漢字で想像がつくものを指差しで頼んでみた。

漢字から想像して指差し注文。何と、きゅうりが!

家人は「牛肉とニンニク芽」の定番。俺のは何かきゅうりが入っていて驚き。やっぱり読めていなかったけど文句なくウマかった!このスタイル日本でも流行って欲しい。

雨も上がったので香港に戻ろうかと歩き出し、トイレついでに立ち寄った大きな建物は「塩田文化館」。これ何だろう、深圳スタンダード?

巨大な図書館の横にある、コレまた巨大な「盐田区文化馆 =塩田区文化館」などが入った複合施設。
何の施設かは調べていない、

うまく表現できないけど、屋内なのにフロアのほとんどが吹き抜けでだだっ広い憩いの場風になっているというスタイル(雨漏りあり)。

中はコレ。意外過ぎてたじろぐ。子ども連れや年寄りが何をするでもなく座って居た

そう言えばこの時、我々の風体が怪しかったからか、公共の施設だからなのか、少し目つきの違うおじさん2人が、何気ないそぶりを装って我々のトイレまで尾行してきたけど、アレが噂に聞く「中国式付き添い」なのか。

思いがけずそんなところで少し「中国本土」感を味わったりして。

香港へ帰るためイミグレに向かう。やはり「ボーダー」体験は世界中刺激的

目的の空母は見られなかったけど、単にニセモノ城でお土産買って帰るだけの旅より遥かに充実した時間だったな〜。

しかし最先端のサイバーBIGCITY深圳初体験がコレかよって。

諸兄にはもう少し下調べをして、面白いところや人気スポットに行っていただき、深圳の魅力を御教示いただきたいと存じます。

◉野磁馬