台中問題にほとんど関心がない御仁でも、地図を見れば流石に「いや、ここは…」と唸らざるを得ない、大変ビミョーな位置にある台湾・金門島。その島の北西部、中国・福建省厦門(アモイ)に面した断崖にポツンと建つ、謎の四角い施設。海風にはためく青天白日満地紅旗。

中台関係がビミョーになる度思い出す不幸な島…なのか?本当に。たびたび様子を伺いたい地域
つっけんどんな打ちっぱなしの外壁にはトライポフォビア発動寸前の穴が(ビッシリ48個)。海岸や崖には朽ちたタコツボの跡なども現存しており、いかにも軍事施設といった佇まい。聞けば国共内戦下、汚い海(中共側の作戦でワザと汚しているという都市伝説も…)を挟んですぐソコ(見た目、数キロ程度)の本土に向けて流したプロパガンダ放送専用の施設だという。穴はスピーカー。朝鮮の南北で川(イムジンガン)を挟んだ軍事施設にもあるよね、民族が同じだから通じる心理戦。ここ同様、観光客しか聞いていないだろうけど。
「ホントにあった!」

ただただ寂しい
こちらの施設では現在、散々中華民国軍の慰問に駆り出されて、「軍人の恋人(若干不名誉?)」と呼ばれたアジアの歌姫テレサ・テン(鄧麗君)が投降を呼びかけたりする当時の肉声や定番ソングが定期的に流されている。ひと気の無い浜の枯れた草に赤茶けた崖…汚い海越しに霞む、明らかにここより発展している大陸の建物群…そこにテレサの澄み切って哀切な歌声が海風に乗って…切なすぎるって。

海の汚さが、より哀切さを醸す。正面が中国本土・厦門
早逝したテレサの数奇な運命はN⚪︎K「映像の世紀〜バタフライなんちゃら〜」をご覧いただくのが一番早くて強いが、なんだかんだの複雑な事情を凌駕して余りある歌手としての実力を再認識した、こんなトコで。いいのかそれで。実は中共内でも(陰で)大人気だったというスター歌手の心理戦放送は結構対岸の兵隊さんにも応えたんじゃないかと思ったね。それも結局、物凄い砲撃の轟音と銃声にかき消されてしまったんだろうけど。
◉野磁馬
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