たどり着いたらいつも 〜 Lost in Putrajaya 〜

プトラジャヤのウリ、通称「ピンクモスク」。わー、キレーで済めばよかったのだが…
アジアローカル旅

3度目の渡馬
過去2回は完全業務、半分業務と常に仕事がらみだったこともあり、今回は純粋な気持ちでマレーシア「ザ・観光」初日。とはいえ、もう最近は世界中どこへ行っても「老後移住先選定」目線ではあるのだけど。
日本において長い間マレーシアは人気移住先ランキング上位であったので、その辺の下調べも抜かりなく行おうと。

長期住む場合間違いなくキモになるのは公共交通機関。試しに電車で少し離れた街へ行ってみようと思い、先達の旅ブログや何かで色々調べてGO。マハティール去りし今、嫌な予感しかしない新興都市Putrajayaへ。
…結論から言うと案の定帰れなくなった。要注意!件の「高速鉄道」や「イスカンダル計画」の話を持ち出すまでもなく、個人的には「なんでも途中でやめる国」だと思っていたが、まさかこのご時世に行ったら帰れない観光地があるとは…岡山かよ…てか俺、未だ全然海外シロートだった…

KLセントラル駅から、ピンクの表示「KLIA transit」で「プトラジャヤ・サイバージャヤ」駅へ。快適。駅前にバス乗り場はあったが、あらゆる案内にとにかく英語表記が皆無。窓口に優しい笑顔のお姉さんがいるわけでもなく。ウロウロしてたらタクシーが仕切りにアピってくるので「ま、いっか」とブースでチケットを買い、ピンクモスクへ。「帰りは歩ける距離じゃないな」と値踏み。さらにタクを待たせておいてバタバタ観光するよりは、ゆっくり見て回って、なんなら地のものなんか食って飲んで、みたいな甘いプランを立てていたので、軽率にも「待たなくていい」旨ドライバーに伝えちゃった(この時点で数回ミスってる)。

「オッケー」と広場に俺を降ろすと、特に大事なことも教えてくれず、にこやかに走り去って行くタクシー。…見回してもタクシーだまりやチケットブースも見当たらないのが若干不安に。さらには視界のどこにもバス停が見当たらないのも不安。
先達のブログでは「時間通りにバスは来ない・来なければもうそのバスは来ない」と恐ろしいことが書いてあったので、常にバス停を視界に入れておきたかったのだけど…

ガチで帰れない観光地

首都機能移転後に政権が変わり、色々途中で止めてるんじゃないか、と嫌な予感しかしない観光地プトラジャヤ

さすが広場はイチオシ観光地らしくさまざまな国籍の人がウロウロ。いざとなったらこの人たちに聞くか、跡をつければ帰りの交通機関にたどり着くでしょ、と観光スタート。
噂に違わぬ迫力の建造物群を楽しみ、インド系のメシ屋でビリヤニとか食って(カンボジアで痛い目を見たので)、正露丸がわりの“赤いコーラ”を飲み、湖の遊覧ボートがちゃんと発着していないのを確認して苦笑したあたりで潮時。いよいよ帰り方を探りどきに。

「ホントにあった!」

ド迫力「ピンクモスク」。湖の遊覧ボートから観たかったが、やってんだかやってないんだかマジハッキリしなくて諦め

まずバス停は本当に無い。多分以前はこれだったんじゃないかという場所もない。観光バスは本当にそこら辺の空きスペースに横付けして、ツアー客を乗せて去って行く。運ちゃんが中にいるタクシーに声をかけたらほぼ全て「いや、乗せてきたお客の帰りを待ってるんだ」と。

スマホでピン付けされた所にバス停はなく、結構離れた所まで探して、帰ってくる間になんかそれらしい路線バスが猛スピードで遠くを走っていく…曇ってるくせにさすが東南アジアの猛暑、徐々に体力も気力も無くなっていく
…徒歩で帰ったという猛者のブログも読んだが、ちょっと今の老体では無理。「放浪旅の醍醐味」とヘラついている時間もサッサと終わり、熱中症のせいか若干視界も暗くなり…

あ。そうそうGrab!どうせこの旅は電車・バス移動になるだろうから後回しでいいや、とこの時点では登録もしていなかったんだけど、マストだよ!東南アジアはGrab無かったら苦痛を味わうことになる!断言。
※ただ、ここに関してはGrabがあったとしても近場に車は流してないらしいけど。

国旗の数は本当にこの10年で増えた印象

数時間後(マジ)、いかにも路線バス的な1台がついに広場に止まったのを目視。恥も外聞もなく駆け寄り運転手さんに「乗せて!死ぬかと思った!どこでもいいから電車の駅に行ければ!」と縋ったところ、「…回送やねん、これ」とのお返事。「え!じゃあ、どっか他に帰れるバス停まるトコあんの?数時間待ってるんだけど!」と半ばクレーマーばりに問うと運転手、何か腹を決めたような目で顎をしゃくり、「よし、乗れやホンナラ」とドアを閉めて発車。
キャッシュは要らんというので、よくわからないが助かったとへたり込むようにシートに。数分後、「ここで降りろや」と複数の路線がありそうなバス停に停車。
「ここで待って8番が来るから、それ乗ったら駅や」と。「どうせなら駅近で降ろしてくれよ」と思いつつも下車。

表示を穴が開くほど見つめても全く理解できない文字列で途方にくれ、すでに半泣き状態で待つことまた数十分。やがてどこ行きかもわからない路線バスが到着。いつの間にかベンチに居たインド系のお兄さんが立ち上がって乗り込もうとしたので、追っかけながら「これ、電車の駅行きますか?」と聞くと「駅?どこでもいいなら停まるよ」と言う。ならばと慌てて乗り込み、小銭を探っていると…運転手さん「あ!キャッシュ?ダメダメ。やってないよ」って……開発途上国あるあるで顕著な「町の発展や国民生活の向上よりも先にキャッシュレス化ばかりが進んじゃう」ってヤツを身をもって体験することに。

国際的迷惑クレーマー再び。「いいじゃん、外人なんだからさ」とか執拗にゴネていると、さっきのインド系が「運ちゃん、俺がこの人の分払うからMRTの駅まで行ってやんなよ」と天使のような助け舟を!
それでも運ちゃん、「そういうのできないんだよね、交通カードは」とか言っていたが流石に停車時間が長すぎと感じたか、ブツクサ言いながらも発車。「ありがとう!本当に感謝します!」とガチ涙が出かけたところでお兄さんが「日本人?駅に着いたらすぐに窓口でTouch ‘n’ Go買いなよ?もう完全キャッシュレスなんだよこの国は」と教えてくれた。COOL…

結局管理システムに抗う気概の残った運転手さんと、非常に合理的かつロジカルにものを考えるインテリお兄さんのおかげでなんとかMRTの駅に辿り着けた(本当にドコだかわからなかったけど)。
お兄さん、駅に降りてから運賃を払おうとすると「ああ。いいよいいよ」と足早に駅の階段を駆け上がって行きました。COOL…

まずは何もなくてもコレ買え!Touch ‘ n’ Go

これがあるからASEAN人は迂闊に誹謗できない。逆に日本でインバウンドのおっさんに俺が同じことできるかと聞かれたらう〜〜〜ん…いや、是非してやらねば、と心に誓ったズンドコ体験でした。

とにかく、賢明な観光客の皆さんには、「絶対俺みたいになるな」と申し上げておきます(常にどの局面でも予習が足らねえんだよ!との誹りは甘んじて受けます)。

◉野磁馬